こんにちは,四十雀です。
今回は,私こと四十雀が新居を建てるまでの話,第十四夜となります。
時期:令和2年5月頃
さて,前回お話したとおり,新居を建てる予定の土地に,私の高祖父が借りた借金の担保としての抵当権が残っていることが判明しました。
sizyuukara-1979.hatenablog.com
正直,このまま放置しておいてもいいのですが,見つけた以上そうする訳にもいかないので,今回,私が抵当権抹消の手続をすることにしたのですが,その方法は,
「抵当権者の相続人を探し,印鑑をもらうか裁判を起こす」
という,聊か面倒なものです。
何か,もっと簡略な方法はないか調べてみたところ,
「あまりに古く,かつ,抵当権者の行方や生死が分からない抵当権」
のような場合に限り,かなり簡単な方法を見つけました。
その方法とは,
①抵当権設定者が行方不明なので,同人に対して,法務局にて「弁済供託」を行う
②弁済供託したので,抵当権が設定されている理由はもう無いのだから抹消して欲しい,という登記申請をを行う
と言うものです。
まず,あまり聞きなれない「弁済供託」というもの,これをかいつまんで説明します。
これは,民法で定められているもので,普通,借りたお金を債権者に返せば,大抵の債権者は受け取ってくれます。
しかし,お金を返しに言っても,理由は分からないが債権者が受け取らない,また,そもそも債権者が行方不明でお金を返せない,なんて場合も世の中にはあります。
このような場合,お金を返せない=返済義務がなくなる,という訳ではありません。
そのため,そのまま放置してしまうと,利息やら遅延損害金やらが付いて,終いには大変なことになりかねません。
そこで,このような場合には,
債務履行地(債権者の住所地等)にある法務局で,弁済供託という手続をすることにより,その債務の支払が免除される
という法律の規定があるのです。
では,この制度を利用し,私は具体的にどのようなことをしたのか,順を追って説明していきたいと思います。
時期:令和2年7月頃
抵当権が設定されているのを発見してから2ヶ月以上経過しての行動となりますが,それだけ,この件に関してはあまりやる気がなかった(あと,色々調べるのに時間がかかった)現われでもあります笑
ア 抵当権者へ配達証明郵便の発送
さて,まずいきなり,法務局に弁済供託をするかというと,そうではありません。
まず,抵当権者宛てに,
「あなたが設定した抵当権がまだ残っている,ついては,その債権を弁済するからまずは連絡をください。」
と言った内容の文書を送ります。
これが実際に送付した通知書の文面です。
ここで,
「なぜ,確実に亡くなっている(又は行方不明の)人に,配達証明郵便を出すのか?」
という疑問を持つ方がいるかと思います。
これは,後述する法務局に弁済供託をする際,
「抵当権者に連絡をしたが,このように郵便物も届かず,どこにいるか分からない」
ということを明らかにする資料を作るためです(返送された封筒には「あて所尋ね当たらず」というゴム印が押されます。これがどこにいるか分からないことを示す内容です。)。
なお,封筒に書く宛先については,登記事項証明書に記載された住所をそのまま記載します(あまりに古い抵当権の場合,合併等の理由ですでに存在しない市町村名が記載されている場合もありますが,その場合,古い名称のまま記載します。)。
ところで,この文書には,元本だけではなく,計算した利息の額についても記載する必要があります。
あまりに古いと計算も大変・・・となるのですが,幸い,法務省のホームページには専用の計算ソフトがあるので,これをダウンロードして活用すると良いと思います。
ここまで準備が出来たのなら,後は郵便局に配達を依頼,後は郵便物が戻るのを待つだけ,なのですが・・・。
実は今回,郵便物を送る前から,抵当権者の住所地に,同人に孫に当たる方が住んでいることが判明していました。
そこで,念のため,予め実家の親父が同人に会って事情を説明し,郵便物が来ても受け取らないようお願い,了承を得る,いわば根回しをしていました。
ところが・・・逆にそれが仇となり,少し想定していないトラブルが発生しました。
と,言いますのも,郵便局に出してから数日後,郵便物が戻ってきたのですが,上記の「あて所尋ね当たらず」という理由ではなく,「受領拒否」という理由で戻ってきてしまったのです。
これにはさすがに参りました。
もう一度,お孫さんに事情を説明し,再度配達証明を出すか・・・などと考えていたのですが,その時,少しおかしいことに気が付きました。
と,言いますのも,郵便物に関して,「受領拒否」という方法を取ることが出来るのは,実は郵便物の名宛人のみのはずです。
もし,仮に名宛人以外の人間が受領拒否できてしまうと,自分宛の郵便物を勝手に喧嘩中の妻が受け取り拒否にした・・・なんて事態にもなりかねません。
どう考えても,配達をした郵便局員の対応が誤っている・・・という結論に至りました。
ただ,これはあくまで私の推論に過ぎません。
念のため,郵便局のコールセンターに問い合わせをしてみたところ,やはり,今回の場合,「受領拒否」はできない,という説明を受けました。
そこで,親父(なお,郵便物は親父名義で出しています。)が直接配達局の窓口に行き,色々と「話」をしたところ,結果として郵便局は非を認め,最終的に「あて所尋ね当たらず」の印を押してくれました。
郵便局も人手が少なく忙しいから,このようなミスもあるようですが・・・何にせよ,訂正してもらえましたし,良しとしたいと思います。
時期:令和2年8月頃
イ 法務局での手続
上記のとおり,事前準備が無事,終了しましたので,次にようやく,法務局で手続を行うことになります。
なお,本来的には,当該不動産所有者が全て行うべきものではあるのですが,今回,私は「使者」という形で手続をしています(なお,委任状を作成し,代理人という立場で手続を行うことも可能です。)。
一 供託手続
まず,午前中,供託関係の部門(総務課)さんに行きました。
その際持参したものは次のとおりです。
①現金
②印鑑(認印)
③事前に印刷した,法務省の専用ソフトで計算した利息等が書かれた紙
④供託の仕方が書かれた法務局ホームページにある書式例
⑤「あて所尋ね当たらず」の印のある郵便物
⑥供託所に書く「供託の原因たる事実」の原稿
です。
まず,窓口において,弁済供託したい旨事情を説明しますと,供託書(OCR用紙)をもらえますので,そこで手書きで必要事項を記載することになります。
この,窓口で事情を説明する際,上記③~⑤を示せば話がスムーズに行きます。
また,⑥を予め作成,それを見ながら供託書(OCR用紙)を書いた方が何かと便利です(本当は⑥もUPしたかったのですが,すでにデータを削除していました・・・。)。
ところで,今回問題となっている抵当権,登記事項証明書ではその利息(年利)が18%とされていて,私もその通りの利息を計算してきました。
しかし,当時の利息に関する法律(利息制限法)では100円以上貸した場合は15%の利息しか設定できない旨,窓口の職員さんが教えてくれ,しかも,15%の場合の利息の金額も計算してくれました。
そして,正しい利息の金額も含む必要事項を供託書(OCR用紙)記載,提出すると,供託金を振り込むのに使う用紙がもらえます。
それを近くにある郵便局のATMで納付手続を行い,そこで発行された領収書を窓口に提出することにより供託手続が完了,供託受理通知書や供託書をもらうことができます。
なお,文字にするとあっという間に思えますが,供託書(OCR用紙)に手書きで長文を書くこともあり,実際には約2時間近くかかりました。
ただ,上記のとおり,分からない点は職員さんが結構教えてくれますし,事前に準備しておけば,それ程大変な作業ではないと思います。
二 登記申請
次に行うのは抹消登記の申請です。
なお,今回,念のため,法務局に事前に登記申請の相談,という内容で予約を入れていました。
そして,その登記申請の相談の席にて,担当した職員さんに,これも事前に用意した,
①登記申請書
②供託書
③「あて所尋ね当たらず」の印のある郵便物
④閉鎖登記簿謄本
を提出,内容の審査をしてもらいました。
なお,今回,私はワードで申請書を作りましたが,法務局さんのホームページには手書き用の申請書もあり,それでも十分対応は可能です。
さて,今回提出した書類,職員さんに審査してもらった結果,内容等に不備はなく,そのまま登記印紙1000円分を購入,無事登記申請すをることができました。
ちなみに,午後については午前中と違い,30分もかからずに終了することができました。
提出後,何か不備等なかったか,初めて行った手続ということもあり,多少不安がありましたが,その後なんら不備に関する連絡はなく,提出から約1週間後,無事,登記が完了したということで,所有者である親父が法務局に行き,登記完了通知を受け取りました。
これで抵当権抹消手続は無事,全て終了という形になります。
今回,個人で手続をしてはみましたが,時間の余裕さえあれば,何とか自分でやれなくはない手続だとは思います。
ただ,ある程度知識が要求される手続ではありますので,我が家同様,古い抵当権等を発見した場合には,まずは登記関係のプロである司法書士に相談した方が良いと思います。
(次回に続く)