こんにちは、四十雀です。
さて、今回の「暮らしに役立つ裁判所の手続」では、「強制競売の手続の仕方」について、動画及び本ブログで補足してみたいと思います。
個人間のトラブルでよくありがちなのが、「貸したお金が返ってこない」という話ではないかと思います。
そのような場合、まず裁判所でお金の返還を求める裁判を起こすことになるかと思いますが、そこで勝訴判決を得た、和解したにも関わらず、それでも相手が支払わない、なんてケースもあり得ます。
そのような場合、取ることが出来るのが相手の財産を差押えるという「強制執行」の手続。
強制競売はその強制執行の一つで、相手の持つ不動産を差押え→売却→回収する、という手続なのです。
かなりざっくりとした表現となりますが、強制競売の申立てをするためには、
①債務名義があること
(債務名義とは勝訴判決や和解調書、公正証書など裁判所や公証人役場の作成した法律で定められた文書)
②相手方が不動産(土地・建物)を所有していること
と、いう状態であることが必要となります。
あとは必要な書類や申立書を準備して裁判所に申立てをすればOK・・・という話なのですが、実は、強制競売を選択する場合、あらかじめ頭の片隅に入れておかなければならないことが色々とあります。
例えば、
ⅰ申立てをする際、50万円程度の費用を予納する
これは、不動産を調査する執行官や評価人に対する費用等で、その額は不動産の筆数により変わります。
一応、不動産が競売で売れればこの費用は一番に回収できます。
ただし、不動産が売れないような場合、事件が終了した場合には、未使用分しか戻りません。
ⅱ他人名義の不動産は売れない
例えば、相手は不動産を持っていない、でもその父親が持っている・・・という場合、その父親の不動産を競売にかけることはできません。
あくまで債務名義に記載された相手の名義の不動産を競売にかけるということになります。
(ただし、相手が自身名義に相続登記をしていないような場合にはまだ何かしら手を打てる可能性があります。)
ⅲ 他に債権者がいて売れない場合がある
これが一番のポイントです。
強制競売を申立てした場合、その相手に対し債権を有する債権者も競売手続に参加、債権の回収を行う場合が多々あります。
具体的には、不動産に抵当権等を設定した担保権者や税金を回収しようとする公租公課庁などです。
実は、このような場合、「債権者なのだから皆平等にお金を分配して回収しよう」ということになるのではなく、各債権者毎に債権を回収できる順位が定まっているのです。
上記の例で言えば担保権者>公租公課庁という順になることが多く、最終的に申立てをした債権者にその順番が回るのです(不動産を担保としてお金を貸した人、また税金がどうしても優先されてしまいます・・・。)。
このような場合、例えば不動産が1000万円で売れる見込みがあったとしても、担保権者が2000万円の債権を有しているような場合、申立てをした債権者が債権を回収できる見込みがない、このまま手続をしても無益な執行になるということで、強制競売手続が取り消されるリスクが実はあるのです。
強制競売は不動産を売却して債権の回収を図るという面では、ある程度大きな金額を貸していたような場合、一回で回収が図れる可能性がある手続ではあります。
反面、上記のように、相手が税金を滞納している、また所有する不動産に担保権が設定されているような場合、強制競売の申立てをしても回収が叶わず費用倒れに終わる・・・なんていう可能性も実はあるのです。
それを回避するためには、あらかじめ不動産登記事項証明書を見て登記の状態を確認する、お金を貸す際には担保を設定する・・・等の方法が考えられますかね?
少し分かりづらい内容かもしれませんが、動画ではかなりかみ砕いて解説をしております(その分、前編後編の二部設定となっておりますが・・・。)。
皆様のお役に立てれば幸いであります。