こんにちは,四十雀です。
今回は,東白川郡棚倉町にある「蟹内」という集落について伝わる伝説についてのご紹介をいたします。
さて,令和2年4月6日,解禁された渓流釣りを楽しむべく,私は棚倉町を訪れ,同町内を通る県道60号線付近を歩いていた時のことです。
「蟹内入口」,つまり,蟹内という集落への入口の案内板がありました。
どこかで聞いたことのある地名・・・と思い,家に帰り,文献を調べてみたところ,ようやく分かりました。
「NPO語りと方言の会」さんが出版されている「ふくしまの伝説」,この中に,蟹内にまつわる伝説が書かれていたのを覚えていたのです。
この本に書かれていますお話を要約しますと,昔,八溝山(福島県と茨城県の県境にあり,久慈川の源流はこの山にあります。)に魔力を持つ大蟹が住んでおり,この大蟹は山を降り,村を襲い人々を傷つけ困らせていました。
そんなある時,須藤権頭(ごんのかみ)という勇士が現れて人々を救うため立ち上がり,村人の力を借りながら,三十人力の怪力を発揮し大蟹を白子川(久慈川支流,現存します。)に誘い出し一発の矢で仕留めました。
この大蟹を仕留めた場所を「蟹沢」と呼んでいましたが,やがて時が経つにつれ訛,いつしか「蟹内」と呼ばれるようになったそうです。
あくまで伝説の範疇であり,魔力を持つ大蟹がいたとはにわかに信じられませんが,しかし,このような伝説が残るということは,何かしら下地になるような事実が存在していたのではないかとも思われます。
また,人々に危害を加える蟹という設定も,個人的にはなかなか興味深いものがあるように思います。
実は,日本国内で淡水域(河口のような汽水域は除く)に生息する蟹の種類は二種類くらいしかいません。
一つはサワガニで,綺麗な渓流や小川に生息する小さな(甲羅の大きさが約2~3cm)の蟹です。
私も一度だけ,阿武隈川(福島市付近)で死んでいる個体を見つけたことがあるほか,須賀川市に住む職場の同僚が自宅近くで見つけた個体を現在も飼育しているとのことです。
案外,身近な場所に生息しているようで,当然,棚倉町辺りなら生息していそうですが,この小さな蟹が伝説のモデルとは少し考えづらいです。
もう一つはモクズガニで,河川の河口や中流域に生息する蟹ですが,そこそこ上流までも遡上することがあるとか。ちなみに上海蟹の中まで,結構美味しいとのことです。
この蟹はサワガニよりも大きく(甲羅の大きさが約7~8cm),まだこちらの蟹の方が,伝説のモデル・・・なのかも知れません(それでも人を襲うには小さい蟹ですが。)
現在の蟹内集落の遠景です。
地名と言うものには,案外面白い伝説・伝承が関連しているいい例だな,と今回感じました。
あまり地名には疎い部分もありますが,今回の遭遇を生かし,今後は地名に関しても勉強してみたいと考えています。
参考資料
ふくしまの伝説(NPO語りと方言の会)