こんにちは,四十雀です。
今回は,私こと四十雀が新居を建てるまでの話,第十三夜となります。
時期:令和2年8月頃
さて,この時点で,
①契約する業者の選定
②住宅ローンの組み方
の2点について何とか考えがまとまり,後は,
③土地の分筆(測量や境界確定有)
→なお,母屋及び附属建物は解体済み
④郡山市役所へ建築許可の申請
を行い,④の結果を待つ(なお,③と④は実家の親父に全て任せています。)というばかりの新居を建てる話。
実は一点,大して影響を及ぼすものではないのですが,さりとてやらなければならない,一つの問題がありました。
今回は,そのお話について,少し時計の針を戻しつつしていきたいと思います。
時期:令和2年5月
さて,本年5月,先にお話したとおり,母屋のある土地について私が新居を建てられるかどうか審査してもらうための資料の一つ,当該土地の登記事項証明書を法務局にて取得しました。
sizyuukara-1979.hatenablog.com
この土地の登記事項証明書というもの,あまり見たことがない人も多いかと思いますが,
①表題部
→土地の所在や地番,地目,地積等が記載
②権利部(甲区)
→所有権に関する事項が記載
③権利部(乙区)
→所有権以外の権利に関する事項が記載(代表的なものとして抵当権や根抵当権)
が記載されています。
折角取得した登記事項証明書です,郡山市役所に提出する前によく中身を見てみることにしたところ・・・。
なんと,抵当権が設定されていました!
しかも,明治40年1月1日金160円の借用を原因とするものです。
なんだこれ・・・?
念のため,このことを親父に話したところ,さすがに親父も抵当権の存在は知らないとのことでしたが,この抵当権者については,どうやら実家からそれ程遠くない場所でかつて自営業をされていた,当時それなりの分限者だった模様。
しかし,一体誰が抵当権を設定したのか。
その答えは,幸いにも我が家にあった当該土地の閉鎖登記簿謄本に記載されておりました。
と,言うのも,あまりにも古い時代に設定された抵当権の詳細は新しい登記事項証明書には引き継がれず,電算化される前の閉鎖された登記簿謄本に記載されているのです。
その閉鎖登記簿謄本を見てみると,どうも私の高祖父に当たる人物が当該土地を担保に金を借りていたことが判明しました。
ところで,明治40年の貨幣価値を現在のそれに引きなおすのは難しいですが,一応の目安として,当時の大卒の初任給が約30円とのこと。
現在の大卒の初任給の平均額は約20万円とのことなので,この数字をベースにすると,現在の感覚で言えば,約150万円以上の金を借りた,ということになるのでしょうか。
一体私の高祖父,何ゆえ正月にこのような大金を借りたのか・・・親父の話によれば,どうやらこの高祖父,大分放蕩者で,それ故あまりお金をもらえていなかったとのこと。
もしかすると,大晦日から正月にかけて,それこそ飲む・打つ・買うの遊びでもして,そのために金を借りたのかも知れません。
さて,この抵当権,見つけた時は驚きましたが,冷静に考えてみると,このまま放置しても構わないものでした。
と,言うのも,まずありえない話ですが,この抵当権者(またはその相続人)が,この抵当権に基づく返済を求めたり,抵当権の実行(競売の申立て)をしても,あくまで元本160円,そしてそれに対する利息(計算したところ3000円程度)を弁済すれば良いだけの話。
上記のように,当時の貨幣価値を現在のそれに引き直し返す必要は全くありません(無論,当時の通貨で返す必要もありません。そんなことしたら,当時の通貨の骨董価値で赤字になります。)。
ちなみに,競売の申立ては裁判所にすることができますが,そのためには収入印紙4000円を申立書に貼付する必要がありますし,収入印紙代以外にも郵便切手代や予納金(裁判所により異なりますが,数十万円です。)がかかります。
放置していて困ることがあるとすれば,
①この土地を売買する際
→土地を売買し所有者が変わっても,抵当権は消えません。そのため,抵当権付きの土地の売買は避けられる傾向があります。
②この土地に新たに抵当権を設定する際
→そうすると,明治40年の抵当権が第一順位,新たな抵当権が第二順位となります。
仮に,第二順位の抵当権者が抵当権を実行して競売の申立てをして,売却された場合,その売却代金はまず第一順位の抵当権設定額に充当されます(つまり,第二順位の方の取り分が減ります。)。
つまり,新たに抵当権を設定する人からすれば,あまり旨味のない土地ということになります。
③子孫のことを考えた場合
→数十年後までこの抵当権が残っていた場合,子孫が抵当権の抹消をするのが少し面倒
と言った点があるかな,と思われます。
このうち,①はその予定はありませんし,②については,そもそも以前お話したとおり,この土地は「市街化調整区域」のため,個人でもない限り,抵当権設定してまでお金を貸してはくれない場所ですし,設定する予定もありません。
そうすると,③が一番現実的な問題となります。
まぁ,見つけてしまった以上,事情が分かる人間がいるうちにやれることをやった方がいい,ということで,抵当権抹消の手続,私がやることになりました。
・抵当権抹消の方法について
では,抵当権の抹消,具体的にどうすればよいのでしょうか。
本来,抵当権者が存命していたり所在が分かる場合,その方にお金を弁済等し,共同で行うものですが,今回,抵当権者が存命か不明(確実に亡くなられていると思いますが・・・。)な場合,どうすればよいか。
普通に考えられる手続としては,
①抵当権設定者の相続人を探し出し,その相続分に応じ元本と利息を弁済,後は皆から印鑑をもらい抵当権抹消登記の申請を行う
②所有者が原告,相続人が被告とする抵当権抹消の裁判を起こす
があります。
ただ,この手の古い時代の方の相続人を探すのは相当めんどくさい話です。
例えば,戦前に抵当権者が死亡している場合だと,大抵「家督相続」を理由に,仮に子供が数人いてもうち1人(大抵は長男)が全ての権利を相続してくれています。
しかし,その相続人(抵当権者の子)がさらに死亡していた場合にはその子(抵当権者の孫)に,その子が死亡していた場合にはさらにその子(抵当権者のひ孫)に,のように,どんどん枝葉が広がります。
これら,抵当権者の相続関係がどのようになっているか,抵当権者以下の戸籍謄本を取り寄せ(他人の戸籍謄本でも,「裁判を行う」等,正当な理由があれば取ることが可能な場合があります。)て調べる必要があるのです。
なお,②の方法について,被告を抵当権者本人とし,被告に裁判所からの郵便物が届かないことを理由に公示送達の上申を出す,なんて方法もあるにはあります。
公示送達とは,当事者の住所が知れないなど,一定要件を満たしそれを疎明してできる送達方法で,裁判所の掲示板に張り出して,行方不明の者に文書を送達する方法(民事訴訟法110条等)です。
もっともこの方法も,多分裁判所から抵当権者の戸籍謄本やら住民票やら出すよう指示され,「行方不明」ではなく「すでに物故」していることが判明,結局相続人を探すことになる可能性が高いと推測されます。
つまり,普通に考えるとかなりめんどくさいという抵当権抹消の手続。
ただ,実は,今回のような,
「あまりに古く,かつ,抵当権者の行方や生死が分からない抵当権」
ような場合に限り,もっと簡便に抵当権抹消の手続を行う方法があります。
その方法に関しましては次回,改めて書いてみたいと思います。
(次回に続く)